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石川県金沢市 谷口吉郎・吉生記念館

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石川県金沢市にある谷口吉生さんの建築作品です。

石川県は建築家の谷口吉郎・吉生さん親子ゆかりの土地なので、谷口吉生さん設計の優れた作品がたくさんあります。

谷口吉生ファンの私からすれば楽しくて仕方がない場所です笑

今回訪れたのは、金沢にある谷口吉生さんとその父である吉郎さんの記念館。

計画段階から楽しみで待ちわびていたので、訪れてやっと目にした時は本当に感動しました!

金沢駅から歩くには少し遠い場所にありますが、その距離が私にとっては逆にワクワク感を高めてくれます。

金沢は過去と現代の街並みや建築が市松模様状に存在する特殊な都市でもあります。

金沢城や迎賓館・市役所があるかと思えば、21世紀美術館などの美術館があったり。

緑豊かな道路や歩道、公園、お店やオフィスも点在していて、常に活気に溢れています。

▪️カタチと素材と納まりが創り出す非日常空間

話は戻って記念館の姿を目にした時、ファンであればすぐに谷口吉生さんの建築であることがわかります。

純粋幾何学体を用いたカタチとベージュ色の花崗岩が印象的です。

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谷口吉生さんの作品の特徴は、一歩敷地内に入ると心が引き締まるような感覚が味わえるところです。

心が落ち着き、余計なことを考えず、静かに作品と向き合える空間です。

物にあふれた現代社会では、中々味わえない非日常の世界へ連れて行ってくれるところが何より素晴らしい。

▪️メタリックなエントランス

エントランスはメタリックパネルで覆われていて、新しさが際立っている空間です。

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美術館や記念館は古い・昔っぽい雰囲気になりがちですが、このメタリックなパネル効果もあり、若い人達も訪れやすい雰囲気となっているように感じます。

エントランスの風除室を抜けると、ベージュ色の花崗岩とガラスで囲まれたロビー空間が現れます。

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なんと綺麗で清潔感のある空間なんでしょう!

ホテルにでも来たときのような空間の美しさに感銘を受けます。

ここは入場券売場・ミュージアムショップ・カフェになっています。

ミュージアムショップには、ここでしか買えない谷口さんの書籍もたくさんあるので楽しみの一つです。

私が長年探していた谷口吉生さんの「私の履歴書」という書籍はここで購入できました。

▪️壁づたいに流れ落ちる光

展示スペースへ進むとまず初めに吹抜けのあるホール空間が現れます。

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トップライトが壁際にあり、そこから光が壁をつたって降り注ぐ設計手法は、谷口さんの作品ではよく用いられています。

これは谷口吉生さんの建築を見る楽しみの一つです。

ホール空間には、上下階を結ぶ階段が設けられています。

ホールの吹抜けが上下階を立体的に繋ぐ装置となっているところも素敵ですね。

▪️和室の広間と茶室と水盤

2階では和室の広間と茶室が出迎えてくれます。

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和室の広間と茶室の前には人工の水盤があり、目の前にある木々が街並みを見せない目隠しのような役割を果たしています。

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静寂を映し出す、ここだけの特別なひとときが楽しめます。

優れた建築素材と、徹底的に納まりが考えられた日本の伝統空間を味わうことで、日本建築の質の高さが理解できます。

ここまで徹底した納まりを見れば、設計者だったら感じることが絶対あるでしょう!

この空間には一切の妥協がありません。

建築家の谷口吉生さんは、図面を徹底して書くことで知られています。

現場監督や職人の方々は、谷口吉生さんの図面を見た瞬間、緊張が走るでしょう。

ここまで書いてくれているのだから失敗は許されないと!

私も同じ建築の設計として、納まりを徹底して考えていきたいと感じています。

私の場合、これほど高級な素材を用いて設計することはほとんど無いのですが、安価な素材でも納まりを考え、図面を書いて設計することで、会社の同僚や他の設計者とは一味違う人間になれると感じています。

だって見る人が見れば、その違いがわかるものですから。

▪️最後はカフェでコーヒーでも

展示室を楽しんだ後は、カフェでコーヒーを飲みながらゆっくり空間に浸り、その時をじっくり堪能します。

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本当にどこからみても美しく納まっていて、惚れ惚れします。

ちなみにカフェのテーブルや椅子は谷口吉生さんがデザインされたとのことです。

まさに空間にふさわしい家具です!

▪️裏側まで綿密に考えられた計画

内部をじっくりと堪能した後は、外部のデザインを研究するため、裏側に回って帰ることにしました。

この建物の裏側は建物基礎一体?と思われる擁壁になっていて、そちらからも建物にアプローチできるよう外部階段が設けられています。

これぞ谷口吉生さん建築の醍醐味です!

自然の地形と一体化されているだけでなく、アプローチもできるという周りのことを考えた計画となっています。

デザインだけでなく計画も含めて全てが細部まで考えられているところが、谷口吉生さんの素晴らしいところです!

私は当時、1泊2日で金沢を旅しましたが、2日に分けて2回この記念館を訪れておりました。。

最後に、石川県には谷口吉生さんの設計した建築がたくさんあるので、谷口吉生さん建築に絞って建築巡りをしてみるのも面白いと思います。