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高さ120メートルの大仏様の構造

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茨城県牛久大仏というとてつもなく大きな大仏様があります。

高さ120メートルの大仏様とあってかなり大きいです。

建築を生業とする私は一度見てみたいと思い、車で行くことにしました。

車の運転をしていると、本当に突然現れるのでラスボス感が凄まじいです笑

昔、スーパーファミコンガンダムRPGゲームで突然とてつもなく巨大で手強いロボットが現れるシーンがあるのですが、その時感じたのと同じような感覚を思い出しました笑

牛久大仏は掃除が丁寧に施されていて、とても綺麗な姿をしています。

建築の設計をしている私が最初に気になったのは腕と手の指でした。

腕は肩から下がっています。かなりの長さの腕がぶら下がっていることになります。

そして指の形。

小さなサイズであれば簡単に作れますが、このサイズの指の長さであればとんでもない片持ち構造になります。

「いったいどうやってあの構造を成り立たせているのか?」と考えていましたが、構造の模型を見て納得。

腕は肩の剛強な架構部分から鉄骨部材を繋ぎ合わせて作られています。

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つまり肩から架構体がぶら下がっている状態になっています。

指の部分は格子状に組まれた架構を繋げて成り立たせています。

こう見ると、「なるほどこうやってつくられているのか!」と勝手に一人で盛り上がっていました笑

同時にこの構造を考えた方と実際につくられた方々は、同じ建築を仕事とする私からすればとても凄いことだと感じています。

よく見ると顔の部分も片持ちの構造になっているんですね!

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牛久大仏は内部にも入ることができるようになっています。

入口は裏側にあるようなので大仏様の裏側に周り、入口へ向かいます。

入口に到着後、靴は脱いで内部に入ります。

最初に出迎えるのは綺麗なイルミネーションの展示スペースです。

その空間を通り、奥にある階段で2階まで上がったらエレベーターで一気に最上階まで上がります。

中は大仏様の胸の部分まで上がることができます。

外から見ると大仏様の胸のあたり、わずかに隙間が空いているのですが、そこが開口部になっていたわけですね。

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↑胸のあたりにある3本の縦ラインが開口部。

そこからは自然豊かな茨城県の風景を楽しむことができます。

牛久大仏は建築の設計をしている私からすると、学びが多くとても勉強になりました。

高さ120メートルの大仏様をつくるという一見無茶な要望でも、諦めず考えてつくられた方々を本当に尊敬しています。

私もその精神を大切にしながら仕事に取り組んでいきたいと思います。

住宅設計者の方へ!ニッチをつくる

ニッチとは西洋建築で壁などにある凹みのことをいいます。

ニッチと聞くと、

「なんだ、ただの壁の凹みじゃないか」

と思われるかもしれませんが、計画によっては見せ場にもなる存在でもあります。

さほどお金もかからず手軽に計画・施工できるので、設計者からすれば多用していきたい存在です。

ここではそんなニッチの活用方法を紹介します。

▪️小物置きとしてのニッチ

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玄関にセパレート型の玄関収納や置き型収納であれば小物などを置く場所があるので問題無いのですが、そういう場所が無い玄関では鍵などの小物を置く場所が無いので不便です。

そんな時にニッチのような存在があればとても助かります。

小物を置くことができますし、凹んでいるので邪魔にもなりません。

おまけにニッチの壁紙を他と変えてあげるだけで、ちょっとしたアクセントにもなります。

▪️空間を有効活用するためのニッチ

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都心のように限られた敷地で計画する住宅では可能な限り空間を有効活用したいものです。

インターホン画面や床暖房リモコンなどはよくLDKの空間内にあることが多いと思います。

動線上にそのようなリモコンが壁に付いたままだと、急いでいる時にぶつかったりして危ないですね。

そんな問題を解決するために、ニッチを設けてその中にリモコンを設置することで肩などをぶつけたりすることが無くなります。

▪️飾り棚としてのニッチ

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廊下など何も無いと退屈な空間になってしまいますが、特段飾りをつくるスペースもありません。

そんな時にニッチを設けることで小物を飾れる棚にもなります。

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ニッチ上部に小さなダウンライト照明を設けてあげればちょっとした美術館の展示のようにもなります。

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このニッチのように上部を曲線にしてみるだけでも可愛らしさ満載の印象になります。

きっと空間が楽しくなるでしょう。

▪️額縁としてのニッチ

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この写真のように壁面を凹ませてその内部にタイルなどを貼ってみると空間の良いアクセントになります。

こうすることでニッチがまるでタイルの額縁のような役割を果たしてくれます。

ニッチはわりと地味な存在ですが、美は細部に宿るものです。

ニッチはつくり方や設ける場所によって大いに活躍しますので、是非とも活用してみて下さい。

 

請負契約書の大切さに気づく

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工事請負契約約款

第31条(2)受注者が支払いを停止する(資金不足による手形、小切手の不渡りを出すなど)により、受注者がこの工事を続行することができない恐れがあると認められるとき、発注者は書面をもって受注者に通知してこの工事を中止し、又はこの契約を解除することができる。ただし、この場合発注者は受注者に損害の賠償を請求することができない。

「施工部隊がいない企業に転職してみて、請負契約がいかに大事かがわかりました。」

請負契約は、人間が過去の事例から反省し、学び、作られているので、人間味が現れている部分が見られます。

施工全般、こうなったらこうなるという先見性があると、暗記していなくても答えが推測できることがよくあります。

(だからといって覚えなくていいんだと安易に考えると痛い目に合うので、基本的な内容は覚えましょう笑)

私自身、転職する前は自社施工の会社にいたので、請負契約に関する内容はあまり身近ではなかったことから、それほど詳しくありませんでした。

ですが、その会社を退職し、転職した会社には営業と設計しかいなかったので、施工は工務店に依頼することになっていました。これがとても貴重な経験になりました。

これは私の体験ですが、過去に私が担当していた現場を工務店さんに依頼した時になかなか工事が進まないことがありまして。。

待てども進捗が無いので確認したら、雨など天候を理由に遅れているとのことでした。

でも私からは明らかに天候が理由で無いことがわかったので追求したら、工務店さんの経営状況の問題であることが判明…

苦しい状況でしたが、このままでは何も進まないので契約の解除を申し入れました。。

そういう状況だと工務店さんに賠償請求しても支払い能力が無いので費用は戻ってこないでしょう。。

こういうときこの条文を見ると、なるほどなと思ったりします。。。

建築費は大きな金額なので、請負契約書をきちんと作れないと、後でどっちがこの費用を負担するかなどで、大きくもめることになる可能性が大いにあります。

私は何回かこれで苦労しましたが、そのおかげか施工の請負契約という分野にかなり前向きに検討することができました笑

もし自分で事業を行いたいと思っている人がいるのならば、請負契約の基本的な内容は頭に入れておきましょう!

建築設計に必要な考え方。遊園地と空き地

遊園地とは、色々な建物や乗り物、イベントが用意されていて、どうやって遊ぶのかを選べる場所です。

空き地とは、何かしらの理由で建物が建っていなく、雑草などが生えた場所で、土管などが無造作に置かれていたりします。ドラえもんで言えば、ジャイアンやスネオ、のび太君がよく集まっているような場所です。

両者には大きな違いがありまして。。

遊園地は「遊び方があらかじめ決まっている」のに対し、

空き地では「遊び方をゼロから考えなくてはいけない」。

よく家を買ったら、

「汚れている」

「音が気になる」

「においが気になる」

と感覚的な部分でクレームをつける人がいるけど、実は使い方次第で減らせるどころかそもそも起きない問題もあります。

何百年も存在し続けている建物があるのに、20〜30年で取り壊されてしまう建物もあります。

大切なのは、住んだら何もしないではなく、「住み続けるにはどうするか?」と考え続けることです。

温暖化防止!ヒートアイランド防止を考える

都心部の温度が上昇するヒートアイランド現象の原因として、アスファルトやコンクリートのような熱を蓄えやすい材料を多く用いていることが挙げられます。

熱を吸収し蓄えると、日中蓄えた熱が、夜になって放射され、一日中暑さが保たれてしまいます。

ヒートアイランド現象を和らげるには、熱を蓄えにくい材料を用いるといいかと思います。

そこで、熱を蓄えにくい高反射性(遮熱性)の材料を外部に用いれば、熱を反射して、建物の温度を下げることができます。

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日本橋の車道

なので私の場合、極力デザインにこだわりがなければ、屋根や外壁には、白系の色を選ぶようにしています。

おわかりのように黒は熱を吸収しやすく、温まりやすいからです。

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↑こちらは戸建て住宅の屋根写真。材料はコロニアルで、色はアイスシルバー

これは本当に小さなことではありますが、少しでも環境問題の削減に貢献できればいいですね。

住宅設計者の方へ!耐震等級について

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「大地震がきたときにこの家は大丈夫なのだろうか?」

最近地震が多く、とても不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

私が仕事でお会いするお客様のほとんどが耐震等級に関して質問される方が増えてきたのを実感しています。

ちなみに耐震等級とは、地震に対する性能の評価基準をいいます。

現在では耐震等級は3段階あり、建築基準法で義務付けられている最低基準を耐震等級1、その上に等級2、更にその上に等級3が設定されています。

ではその等級とはどのようなものなのでしょうか?

▪️耐震等級1

耐震等級1とは、阪神大震災や2016年に起きた熊本地震のような震度6強〜7級の地震がきても倒壊しないことを基準としています。

最近大地震がどんどん増えてきていますので、それに伴い、建築基準法の最低基準もどんどん厳しくなってきています。

というのも2016年の熊本地震では、震度6〜7クラスの地震が数回連続して起きてしまい、今までの常識を覆してきました。

そういったこともあり、耐震基準もどんどんアップデートしていかなければならないからです。

▪️耐震等級2,3
では、耐震等級3はどのくらい強いのでしょうか?

耐震性で比較しますと耐震等級1の基準を1倍とした場合、等級2は1.25倍、等級3は1.5倍になります。

また建物を倒壊から守る耐力壁の数に関しても基準が決められていて、耐震等級1の基準を1倍とした場合、等級2は1.55倍、耐震等級3は1.86倍の壁量が必要になります。

▪️耐震等級3のメリット

また、耐震等級2からは床倍率というもので水平剛面の耐力(床の強さと考えて下さい)を計算するという規定があります。

当然等級3は等級2より厳しい基準になります。

壁だけではなく床と屋根の耐力を検討しているところが、等級1とは大きく違う点です。

大きな吹抜けがある場合に、その階の床がきちんと耐えることができるのかを検討するのが、耐震等級1とは大きく違う点です。

ちなみに耐震等級3にすることで、地震保険に加入すると、割引を受けることが可能になります。

▪️まとめ

耐震等級は高ければ高いほどもちろん安心・安全ですが、逆に壁が多くなってしまう・吹抜けが作りにくい・間取りの自由度が減る・予算が上がるなど、もちろんデメリットもあります。

また耐震等級が1だから不安かといいますと、必ずしもそういうわけではありません。

そのぶん空間が広く取れたり、窓が多く設けられるなど、メリットもあります。

私から言えるのは、「何を選択するか」だと思います。

以上のことを踏まえて、家づくりの一助となれば嬉しいです。

敷地内で雨水を浸透させる

最近、日本に降る雨量がとても気になります。

東京のような場所では土が少ないので、大抵の雨は下水に流れるようになっています。

「下水に雨が流れすぎると川が氾濫する原因となるので、極力敷地内で雨が浸透するようにすれば、下水も少なくできるのではないか?」

ということで建築をつくる人間として、自分が設計した敷地では雨が浸透するような工夫をすることにしていきたいと考えています。

そうは言ってもそんな壮大なことではなく、ほんの小さなことでもいいと思います。

住宅の敷地で例えると、

「外構計画ではコンクリート仕上げ床範囲を減らし、土仕上げにして植物を植える」

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コンクリートの床では雨が降るとそのまま下水に流れていきますが、敷地内に土と植栽があれば雨を吸収してくれます。

これで下水に流れる水量を減らすことができます。

「砂利仕上げの部分を増やす」

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こちらも先程と同じくコンクリートの床では雨が降るとそのまま下水に流れていきますが、敷地内に砂利があれば雨を吸収してくれます。

これで下水に流れる水量を減らすことができます。

「敷地内に一部でも浸透ますを設けてみる」

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庇のついているバルコニーなど、ある程度雨量を防ぐことが可能な場所であれば、その部分の雨水が浸透ますに流れるようにしても、溢れてくる可能性は低いので、取り込んでみる価値はあります。

屋上緑化をする」

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建物を敷地に計画するということはその場所にあった自然を奪うことにもなります。

なので奪ってしまった分は建物の屋上に緑化することで還元することができます。

おまけに断熱効果や遮熱効果も期待できます。

「敷地内に水盤を計画する笑」

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美しい建物には水盤がよく似合います。

敷地に余裕がある人は是非とも水盤を設けてみると環境的にもデザイン的にも向上します笑

また植木鉢を置くだけでも、一時的には雨をある程度吸収してくれるので、効果はあると思います。

おまけに植物の蒸散効果や遮熱効果で、ヒートアイランドを和らげる効果もあります。

住宅一つにしても、日本だけで毎年何十万棟と建てられているのだから、効果はかなり大きくなります。

小さなことかもしれませんが、環境への負担をみんなで協力して減らしていきたいと思います。