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建築設計者がプレゼンで役立つ耐震等級のメリット・デメリット

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「大地震がきたときにこの家は大丈夫なのだろうか?」

「耐震等級が低いとお客様に説明しづらい。」

申し遅れましたが、私は建築の設計を生業としている一級建築士です。

仕事でお会いするお客様から耐震等級に関して質問されることが増えてきました。

ちなみに耐震等級とは、地震に対する性能の評価基準をいいます。

現在では耐震等級は3段階あり、建築基準法で義務付けられている最低基準を耐震等級1、その上に等級2、更にその上に等級3が設定されています。

耐震等級は高ければもちろん良いですが、低いからといってやばいかと言われたらそんなことはありません。

まずは耐震等級とはどのようなものなのかを知って頂き、その上でメリット・デメリットを説明したいと思います。

▪️耐震等級1

耐震等級1とは、阪神大震災や2016年に起きた熊本地震のような震度6強〜7級の地震がきても倒壊しないことを基準としています。

最近大地震が増えてきていますので、それに伴って建築基準法の最低基準もどんどん厳しくなってきています。

というのも2016年の熊本地震では、震度6〜7クラスの地震が数回連続して起きてしまい、今までの常識を覆してきました。

そういったこともあり、耐震基準もどんどんアップデートしていかなければならないからです。

▪️耐震等級2,3

では、耐震等級3はどのくらい強いのでしょうか?

耐震性で比較しますと耐震等級1の基準を1倍とした場合、等級2は1.25倍、等級3は1.5倍になります。

また建物を倒壊から守る耐力壁の数に関しても基準が決められていて、耐震等級1の基準を1倍とした場合、等級2は1.55倍、耐震等級3は1.86倍の壁量が必要になります。

▪️耐震等級3のメリット

また、耐震等級2からは床倍率というもので水平剛面の耐力(床の強さと考えて下さい)を計算するという規定があります。

当然等級3は等級2より厳しい基準になります。

壁だけではなく床と屋根の耐力を検討しているところが、等級1とは大きく違う点です。

大きな吹抜けがある場合に、その階の床がきちんと耐えることができるのかを検討するのが、耐震等級1とは大きく違う点です。

ちなみに耐震等級3にすることで地震保険に加入すると、割引を受けることが可能になります。

▪️耐震等級3のデメリットとは?

耐震等級は高ければ高いほどもちろん安心・安全ですが、逆に壁が多くなってしまう・吹抜けが作りにくい・間取りの自由度が減る・予算が上がるなど、もちろんデメリットもあります。

特に今の情勢では木材価格が高騰しています。

耐震等級を上げることは使用する木材が増えてしまうことになるので、その分価格も上がってしまいます。

都内の限られた敷地に建てる狭小住宅などでは壁量や梁サイズなどの制約から間取りの自由度や窓の大きさなどもコンパクトになってしまうので住みにくい空間となってしまう場合もあります。

また耐震等級が1だからダメというわけではありません。

そのぶん空間が広く取れたり、窓が多く設けられるなど、メリットもたくさんあります。

建築関係者の私から言えるのは、「何を選択するか」だと思います。

家を建てる際には必ず予算というものがありますので、安心したければ耐震等級3にするべきですし、逆にデザインや設備などにお金を使いたければ等級1でもよいなど、予算を何に使用するかは家族と話し合って決めると良いでしょう。

以上のことを踏まえて、家づくりの一助となれば嬉しいです。