谷口吉生さんは美術館の設計で有名ですが、他にも学校や体育館、オフィスビルやホテルなど本当に色々な用途の建築を設計しています。
私は今回、谷口吉生さんが設計した大規模オフィスビルに訪れてみました。
訪れたとは言っても勝手に建物内に入ることはできませんので私は外回りをぐるぐる回るだけです。
日本IBM幕張テクニカルセンター
オフィスビルは歩行者用デッキでつながっているので、2階部分からアクセスできるようになっています。
高層ビルが建ち並ぶこの場所ですがあえて横長の低層(というより中層ですが)のビルにしているんですね。
オフィスビルを考えたときにたしかにワンフロア面積が大きな方が便利だと感じることがあります。
また低層に抑えることで建物周りにある庭園と視覚的にも体感的にもつながりをもたせることができるので、人間にとってはそちらの方がいい気がします。
オフィスの庭園では竹林があります
この建物を見ていると、なんだか私は磯崎新さんの東京都庁案を思い出しました笑
磯崎新さんの東京都庁案も高層ビル案が多い中、唯一磯崎新さんだけ中層のビル案を提示されていました。
話はそれましたが、IBM幕張テクニカルセンターは谷口吉生さんらしさが盛り込まれていました。
劇的な演出がされている通路
例えばこのエントランスの通路。
長スパンの通路
通路は庭園上部を突き抜けるように設けられているので通路からは庭園を見下ろすことができます。
ガラス張りの通路からは1階の庭園が見下ろせる
このあたりの演出、本当に素敵でした。
とても立体的な空間体験ができます。
美しすぎる外部階段
反対側には通路に上がるための階段もあります。
通路階段
こちらの階段はただの階段ではありません。見ていただくとわかるようにただならぬ雰囲気をまとっています。
階段内部
階段踊り場上方には開口が開けられ光が落ちています。オフィスビルの外部階段とは思えないくらいのこだわりが見えます。
上がってくるときは美術館の階段みたいです
もう一つ外部階段があるのですが、こちらもおそろしいくらいのこだわりが見えます。
外部階段
きれいに整えられた姿をしていて一歩中に入ると天井に大きく開けられた開口とドラマチックな階段部分が度肝を抜かれます。
研ぎ澄まされた階段
こんな開口もありました
この階段を見たときに私は土門拳記念館を思い出しました。階段のもつ雰囲気がよく似ています。
均整のとれたファサード
階段を登り下りしながら外回りを歩いていると統一された外観デザインが気になります。
外観は上下2段階にわかれていて、しっかりと中間見切り部材で分けられています。
2段階に分けられたファサード
ファサード下部分はタイル範囲が多い重厚なデザインに対して上部分はガラス範囲の多い軽快なデザインとなっています。
外壁に関しても一部の隙もなくきれいに納められていました。
きれいに納められた外壁
まさにこの納まりが美しさの秘訣ですね!
通路上の建物が切削された場所は憩いの庭園となっているんでしょう。
うーん上がってみたい。。。
水盤とピロティ
庭園部分を見ていると水盤があり、その水盤奥のピロティになっている場所にはテーブルがたくさん置かれたスペースがあります。
水盤とピロティ
素敵な空間でピロティがいい具合に光を遮ってくれるので、とても穏やかな空間になっています。
ピロティ空間
更に建物周囲を歩いていると大きな竹林が目に入ってきます。
敷地内にある竹林
竹が生い茂っていて人工的とは思えないほどの竹の密度でした。
きっと内部から見ると素敵なんでしょうね。。
私はしばらく建物の外周部を歩いていましたが、これだけ大きな建物なのに細部までデザインされています。
大きな建物なのでスケール感も大きくなるかと思いきや、階段などのディテールはおそろしいくらいの細やかです。
いったいなぜこのようなことが可能なのか?
きっと谷口吉生さんの事務所で修行できたらその理由がわかるのでしょう。
建築家の飯田善彦さんや小川広次氏は谷口吉生さんの事務所出身なので、谷口吉生さんのお仕事ぶりを近くで見られていたと思います。
うらやましい限りです。。。
大学生時代、建築学科には卒業設計という大学の最大の課題がありますが、私は卒業設計で何の賞も取れませんでした。
卒業設計で評価された同級生は皆、大学院に進学したり有名な建築家の設計事務所に就職していき、うらやましく思っていました。
誰からも評価されることもなく、一度は設計を諦めましたが、私は建築が好きなので今でも続けています。
谷口吉生さんの作品を見ることでいつも意識がたかぶります!
私は目の前の建築設計の仕事を楽しみつつ、一つ一つしっかりとおこなっていきます!